相続登記の流れ

司法書士の相談会などで、身内が亡くなったのだが、家や土地の相続登記(名義変更)を自分でできるかという質問を受けることがあります。

ケースによるというのが実際のところですが、相続関係や所有不動産の権利関係がシンプルで、時間が取れる、特に平日に法務局へ行く時間が確保できるのであれば、ご自身で手続を行うことも可能です。

例えば以下のようなケースです。

ケース
夫Aが亡くなり、相続人が妻B、子であるCDの兄弟。
AB夫婦で住んでいた、A名義の家と敷地の所有名義を妻Bに変更したい。

相続登記の流れは、概ね以下のようなります。

  1. 1.戸籍謄本ほか必要書類の収集
  2. 2.遺産分割協議書の作成
  3. 3.登記申請書の作成
  4. 4.登記申請

 

1.戸籍謄本ほか必要書類の収集

戸籍謄本

以下の戸籍謄本-戸籍・除籍謄抄本-を収集し、相続人の範囲を確認します。

・被相続人Aの生殖可能年齢(12歳程度)から死亡までの戸籍
・配偶者B、子CDの現在の戸籍
・Aの住民票の除票または戸籍の附票

 

これらの戸籍を調べてみて、戸籍の記録上、Bが妻であり、子がCDのみであれば、相続人となりうる人の範囲はBCDとなります。

そして、Aの死亡時に、BCDが生存したことを、それぞれの現在の戸籍で証明します。これにより、Aの相続人は、妻と子であるBCDで確定します。

戸籍は、本籍地所在地の市役所等で取得できます。

本籍地が分からない場合は、本籍地入りの住民票を取得することで確認できます。

土地建物の登記事項証明書(謄本)

登記事項証明書から、土地建物の所有者がAで間違いないこと、証明書に記載されている所有者Aの住所が住民票と同じであることを確認します。

登記事項証明書は法務局で取得することができます。この際、権利証や固定資産税課税明細書などから、地番や家屋番号を控えて行きます。

名義人となる相続人の住民票

住所地の市役所等で、Bの住民票を取得します。

相続人全員の印鑑証明書

住所地の市役所等で、BCDの印鑑証明書を取得します。実印登録していないのであれば、登録を行います。

固定資産評価証明書

土地建物の評価額は、登記の際の登録免許税の算定基準となりますので、その証明書を取得します。

なお、評価証明書は毎年4月1日に更新されます。

取得後に3月31日を経過してしまった場合、取り直しとなるので注意が必要です。

 

2.遺産分割協議書の作成

相続人BCDで、土地建物をBが単独で相続する旨の遺産分割協議書を作成します。

他に預貯金や動産などの相続財産がある場合でも、とりあえず土地建物についてのみ遺産分割協議書を作成しておくことも可能です。

作成した遺産分割協議書には、相続人であるBCDが、それぞれ実印で押印します。

実印だと思っていたものが、実際は銀行印など別の印鑑だったというケースもありますので、遺産分割協議書への押印の前に印鑑が実印に間違いないかを、印鑑証明書の印影で確認しておきます。

 

3.登記申請書類の作成

申請書の作成

法務局に提出する登記申請書を作成します。

本件では、名義人となるBが申請人となります。

・記載例については下記リンクから
「遺産分割協議による相続(相続人全員で話し合いをする場合)」→「 所有権の移転の登記(相続・遺産分割)」へ。
→法務省公式サイト・記載例

※同記載例は、子が名義人となるケース、本件ではCDが名義人となるケースのものですので、ご注意下さい。

今後も他の相続手続を行う予定の場合

・相続関係説明図の作成

相続登記以外にも、預貯金の名義変更など相続手続を行う場合、提出した戸籍の返却をしてもらうのが便宜です(原本還付)。

提出する戸籍の返却を希望する場合は、上の記載例にある相続関係説明図も作成して提出します。

・遺産分割協議書の原本還付

遺産分割協議書の返却も受けたい場合、協議書のコピーをとり、コピーに「原本還付」(赤字)「上記は原本に相違ありません」と記載し、氏名も記載した上で申請書に押したのと同じ印鑑を押します。

この写しを遺産分割協議書の原本とともに提出します。

・法定相続情報の発行請求

また、法定相続情報の発行を受けておくと、これを戸籍一式に代えて相続手続に利用することができます。

ただ、法定相続情報は法定相続人が誰であるかを証明するものであり、本件では相続人がBCDであることまでを証明するにとどまります。Bが財産を単独で相続することまで証明するものではないため、他の相続手続においては、別途遺産分割協議書等の提出が必要となる場合があります。

⇒法定相続情報制度について

登録免許税の納付

登録免許税は、不動産の評価額の1000分の4です。土地建物の評価額が1000万円であれば、4万円となります。軽減がされる場合もあります。

登録免許税は、通常は収入印紙を申請書に貼付して納付します。

収入印紙は法務局で購入することができます。

 

4.登記申請

申請する

必要な書類が全て揃ったら、登記申請書を作成し法務局に相続登記の申請を行います。

申請する法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局です。

・管轄法務局を調べる
→法務局公式サイト

申請は法務局の窓口へ直接申請書を持参するほか、郵送によることも可能です。

登記の完了予定日は、法務局へ直接申請する場合は受付で確認することが出来ます。

郵送による場合も各法務局のホームページで確認することができます。

 

不備があった場合

申請書に誤りや、書類の不足等の不備があった場合、法務局から補正の連絡が来ます。

郵送で対応できるケースもある一方、法務局まで行かなければならないケースもあります。

 

登記完了

登記が完了したら、法務局へ行き、新たな権利証となる登記識別情報を受け取ります。郵送による受け取りも可能です。

添付した戸籍や遺産分割協議書の返却を希望する場合は、これらも受け取ります。

また、不動産の登記事項証明書も取得し、名義人が相続人、本件ではBになっているかを確認します。

登記識別情報は権利証となるものなので、厳重に保存します。

 

◇ その他相続手続に関する情報
⇒カテゴリ:相続手続について