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相続人が多数の場合向け
長期間相続登記が未了である不動産の相続登記を行う際、相続人が多数に上ることがあります。
このような場合の対処として、相続分の譲渡という方法があります。
相続分の譲渡は自分の相続人としての立場自体を他の相続人に譲るものです。
設例
被相続人 X
相続人 ABC
相続財産 X名義の土地建物
Xが亡くなり、その子ABCが相続人となった。
X名義の土地建物をCの名義にすることとした。
設例はシンプルなものにしてあります。このようなケースであれば土地建物をCの名義にするには通常は遺産分割協議をすれば足りるでしょう。
ですが、これがXがひいお爺さんだったりすると相続人が多数に上る可能性があります。それこそ50人100人となることもあります。
このような場合は相続分の譲渡の方法が解決には向いてきます。
遺産分割協議との違い
遺産分割協議との違いは、遺産分割協議で相続財産を他の相続人に譲っても、その者は引き続き相続人の立場にあるのに対し、相続分の譲渡をした者は相続人の立場から離脱する点にあります。
相続財産は得られない代わりに、その後は遺産分割調停などの面倒な手続からは解放されます。
多少、語弊のある言い方になりますが、相続分の譲渡は多数に上る相続人の数を減らす方法と言うこともできます。
例えば相続人が50人である場合、45人から相続分の譲渡を受けた相続人は、後は残る4人の相続人を相手に遺産分割調停などの手続をとれば足りることとなります。
相続分譲渡証書の記載例
相続分を譲渡したことを証する書類については特定の様式はありません。ただ、実印での押印と印鑑証明書が必要となります。
相続分譲渡証書
譲渡人(以下、甲とする)
住所 〇〇県□□市△△123番地
氏名 A
譲受人(以下、乙とする)
住所 □□県△△市〇〇456番地
氏名 C
被相続人
本籍 □□県△△市〇〇456番地
氏名 X
死亡年月日 令和〇年△月□日
甲は乙に対し、被相続人、亡Xの相続について、甲の相続分全部を乙に譲渡した。
令和〇年〇月〇日
甲 〇山太郎 ㊞(署名と押印)
この押印は実印によります。
上記の設例では、A及びBが、この証書を印鑑証明書とともにCに交付します。
これによりCはXの相続について単独の相続人となります。A及びBから貰った証書を添付して、法務局へX名義の土地建物をC単独名義にするための相続登記を申請することができます。
家庭裁判所への提出書類との違い
上記のように相続登記のための譲渡証書には譲渡人の署名押印があれば足りるのですが、家庭裁判所の様式は少々異なっており、譲受人の署名押印が必要とされています。
家庭裁判所は相続分の譲渡を譲渡人と譲受人の合意によるものという捉え方をしているのか、理由は少々不明ですが、ともあれ相続人が多数に上り、遺産分割調停が必要となる可能性がある場合は裁判所の様式を使用するのが無難と思われます。
PDF版のリンクを掲載しますので、ご参考ください。
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