父親の名義の土地や建物を子に贈与しておきたい、夫婦共有名義の土地や建物を、妻の単独名義にしておきたい。

このような場合、法務局に対して、名義変更の登記(所有権移転登記)を申請する必要があります。

申請のやり方については、オンラインによるか、契約書の代わりに登記原因証明情報を作成するか等により変わってきますが、ここでは書面申請、契約書を提出する方法によるケースを想定します。

登記申請の大きな流れとしては、次のようになります。

  1. 1.添付書類の作成、収集
  2. 2.登記申請書の作成
  3. 3.法務局への申請
  4. 4.登記完了

 

 

1.添付書類の作成、収集

所有権移転登記の申請に際して申請書に添付する書類は以下となります。

①贈与契約書
②権利証
③現在の名義人の印鑑証明書
④新名義人の住民票
⑤評価証明書

 

①贈与契約書

設例では、父親から子、あるいは夫から妻へ不動産を譲り渡す旨の契約書です。

決まった様式はありませんが、法務局の記載例が参考になります。

⇒不動産登記の申請書様式について(法務局公式サイト内。5.所有権移転登記申請書(贈与))

これはあくまで記載例ですので、ケースに合わせて内容を変更します。

印紙(200円)を貼るのを忘れないようにします。

 

②権利証

近年に登記をした物件であれば、登記識別情報、昔に登記したものであれば、登記済証が権利証となります。

記載されている名義人の氏名住所に変更が生じていないかを確認します。

もしも氏名住所に変更が生じていたときは、所有権移転登記に先立って、登記事項証明書(謄本)上の氏名住所を変更する登記を申請する必要があります。

権利証が見つからない場合、身内間での登記であれば事前通知の方法をとることもできます。

⇒権利証を紛失してしまった場合

 

③現在の名義人の印鑑証明書

実印の印鑑証明書が必要となります。

住民登録している市区町村役所で取得できます。

この印鑑証明書は作成から3ヶ月以内のものであることが必要です。

印鑑カードがあれば、子や配偶者などの第三者が取得することもできます。

また、マイナンバーカードを持っていれば、コンビニ等で取得できる自治体が増えています。

 

④新名義人の住民票

新たに名義人となる方、設例では、お子さん、奥さんの住民票が必要となります。

子や配偶者などの第三者が取得するためには、委任状が必要です。

住民票も、マイナンバーカードを持っていれば、コンビニ等で取得できる自治体が増えています。

 

⑤評価証明書

土地や建物の評価額を証明する書類です。

登録免許税の計算のために用います。

不動産所在地の市区町村役所で取得できます。

これも、子や配偶者などの第三者が取得するためには、委任状が必要です。

 

2.登記申請書の作成

必要書類が集まったら、登記申請書を作成します。

 

申請先法務局の確認

申請先の法務局を確認します。

この管轄法務局は登記申請書の記載事項でもあります。

管轄法務局は、不動産所在地を管轄する法務局となります。

⇒管轄のご案内(法務局公式サイト内)

 

申請書の作成

申請先の法務局を確認したら、申請書の作成に取り掛かります。

申請書の雛形も上記法務局公式サイトからダウンロードできます。

ケースに合わせて入力していきます。

例えば、AB夫婦の共同名義の不動産を妻Bの単独名義にしたい場合は、登記の目的を「共有者A持分全部移転」と記載します。

また、父親A名義の不動産を、息子Cのほか、娘Dにも等分の持分で贈与したい場合(共有名義は必ずしも好ましくはありませんが)は、権利者として、CDの氏名住所、持分をそれぞれ記載します。

権利者
○○市○○町一丁目2番地3
持分2分の1 C

△△市△△町四丁目5番地6
持分2分の1 D

 

登録免許税の計算

登録免許税は、法務局に納める申請手数料のようなものです。

贈与税とは別のものなので注意が必要です。

額は、建物については評価額の1000分の20、土地については1000分の15となっています(令和元年5月時点)。

評価額は、評価証明書に記載されています。

計算にあたっては、評価額の千円以下は切り捨てます。

登記申請書に記載する「課税価格」も、この切捨て後の額となります。

建物の評価額が1000万円であれば、登録免許税は20万円、評価額が500万円であれば、登録免許税は10万円となります。

算出した登録免許税の額のうち、100円未満の額は、切捨てとなります。

登録免許税は、通常は金額分の収入印紙を貼付して納付します。

A4の用紙に貼付して申請書にホチキスで綴じ込む事もできます。

収入印紙は郵便局等の金融機関で購入できます。法務局でも購入できるところがあります。

 

申請書への押印

司法書士に委任せず、自分達で申請する場合、義務者の氏名の横に、実印で押印する必要があります。

実印と間違えて銀行印等を押してしまうケースも見受けられますので、押印の前に印鑑証明書の押印と照らし合わせて、実印であるかを確認します。

権利者についても押印が必要ですが、認印で差し支えありません。

また、申請書が複数枚になるときは、頁の境目に契印します。

 

原本還付の準備

贈与契約書や住民票、評価証明書などを登記申請後に返却して欲しい場合は、そのコピーを用意します。

コピーの末尾に、「原本還付」、「上記は原本に相違ありません」と記載するほか、申請人の氏名を記名し押印します。

コピーが複数枚となるときは、頁の境目に契印します。

 

 

3.法務局へ登記申請

申請書と原本還付用のコピーの用意ができたら、法務局に申請します。

法務局への申請は、窓口へ申請書一式を持参するほか、郵送によることもできます。

持参する場合、窓口に登記完了予定日が掲示されていますので、登記が完了する予定日を確認しておきます。

登記完了予定日は各法務局の公式サイトからも確認できます。

 

権利証の提出方法

登記済証は、そのまま提出すれば足ります。

登記識別情報を提出する場合は、封筒に入れて、封筒に登記識別情報在中の文言のほか、登記の目的、申請人の氏名を記載します。

 

郵送での新たな権利証交付を希望する場合

登記が完了すると、新たな権利者名義の権利証(登記識別情報)が発行されます。

この登記識別情報や、贈与契約書の返還を郵送で受けたい場合は、返送用の封筒も申請書とともに提出します。

 

補正

申請書に不備があると、法務局から連絡が来て修正を求められます(補正)。

この補正は、平日、法務局が空いている時間帯しかできませんので、ご注意下さい。

 

 

登記完了

申請に不備がなければ、通常、予定日に登記は完了します。

新たに発行された権利証と、還付される贈与契約書等を受け取りに行きます。

上述のように、郵送で受け取ることもできます。

法務局に受け取りに行く場合は、一緒に登記後の登記事項証明書を取得しておくとよいでしょう。後に融資を受けたり、売却する際に登記事項証明書の提示を求められることがあります。

登記事項証明書も、郵送で取得することもできます。

念のため、登記事項証明書に、新たな名義人が記載されているのを確認します。

 

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