認知症の方は基本売買はできない
寿命が長くなるのは喜ばしいことですが、他面、加齢とともに判断能力は衰えて行きがちであることは否めません。
今まで住んでいた土地建物を売却して、そのお金で安全に生活できる施設に入所する、ご家族と同居するための家を建てる。
そのように、いざ売却をしようという際に、当の所有者が認知症となってしまっている場合があります。
売買契約を含め、契約はしっかりとその内容を理解し、真意に基づいて締結しなければ無効となります。
そのため、認知症の方は、通常は売買契約を締結することができません。同じく契約である賃貸借契約も締結することはできません。
ただ、認知症と言っても一律ではなく、常に意思能力を欠いているわけではない、時折、意思能力を回復するというケースもあります(いわゆる「まだら」)。
そのように、意思能力を回復したときに、売買契約を締結することはできます。
認知症である、要介護の認定を受けているからと、一切契約が出来ないというものではありません。
ただ、意思能力が回復しているとは契約が出来るとしても、それをどのように判断するかは問題となります。
医師の立会をお願いするという方法も考えられますが、実際、お医者さんでもその場その時点で真に意思能力を回復しているかを判断することは必ずしも容易ではないということです。
仮にその時点で意思能力があると認められたとしても、人間の判断力は更に年齢を重ねるに連れてどうしても衰え、その後の生活で同様の判断が必要なケースは増えていきます。
後見、信託を利用するのが望ましい
やはり、後見や信託といった対策を講ずるのが望ましいといえます。
後見は自身で後見人になったときの事務処理の負担はありますが、認知症の方の関係先は本人とは意思の疎通が図れない以上、結局親族の方に連絡してくるため、後見制度を利用しなくても事務処理の負担は変わらないといえます。
司法書士などの専門職後見人が選任された場合は費用の負担が生じますが、事務処理の負担は免れることができます。
信託は判断能力がしっかりしているうちに信託契約を締結しておく必要があります。
また、初期の組成の段階で少なくない費用が必要となります。
他面、信託開始後の事務処理の負担や費用を軽減できるメリットがあります。
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