家や土地の所有者が認知症などにより後見開始の審判がなされると、後見人には被後見人の代理権が付与されます。

このため、被後見人の財産の処分も基本的に後見人の権限となりますが、被後見人の居住用財産の売却については裁判所の許可が必要となります。

被後見人の保護のためです。

 

この売買による所有権移転登記申請の登記原因証明情報の登記原因事実の記載について、時系列で迷うことがあります。

 

通常、被後見人の居住用の土地建物を売却するときは、売主と買主で代金の額や、支払い、引渡しの時期などを刷り合わせ、その契約書案を裁判所に提出して許可の審判の申立をすることとなります。

そして、許可が出れば、契約書に署名押印ということになります。

このような事実関係の流れを見ると、当初の刷り合わせが終わった時点で、条件付き(裁判所の許可が出なければ失効する等)の売買契約が締結されていると見ることもできます。

そのため、手元の実務書では、登記原因事実の時系列が下記のようになっています。

① 売買契約の締結。代金支払い時に所有権が移転する旨の特約。
② 裁判所の許可。
③ 代金の支払い。
④ 所有権の移転。

 

他方、当事者の方々の意識としては、許可後の契約書への署名押印が正式な契約締結というものだと思われます。

そのため、当事者の方々の意識に沿って登記原因事実の記載を考えると、下記のような記載も考えられます。

① 売買契約の締結。代金支払い時に所有権が移転する旨の特約。
② 代金の支払い。
③ 上記契約について裁判所の許可がなされている。
④ 所有権の移転。

 

では、いずれが正しいでしょうか。

この点、いずれが正しいというより、いずれも間違いではない、という取扱いのようです。

いずれの記載方法でも受け付けられます。

親族の後見人となっている方でも、居住用財産売却の登記手続は司法書士に依頼するというケースが多いとは思いますが、ご自身で手続をされる場合の参考になれば。

 

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