項目
法定相続情報とは
平成29年(2017年)から、法定相続情報制度が始まりました。
これは、相続が始まったときの本来的な相続人-法定相続人-が誰であるかについて証明を行うものです。
相続手続には不動産の名義変更、預貯金の解約、自動車、株式の名義変更、相続税申告など様々なものがあります。
それらの手続の際には、まず本来の相続人-法定相続人-が誰であるかを明らかにする必要がありますが、そのためには戸籍の収集が必要となります。
従来、各種の相続手続の際には、その都度この戸籍の束、戸籍一式を提出する必要がありました。
例えば法務局へ不動産の名義変更のために戸籍を提出し、それが終わったら郵便局へ口座解約のために戸籍を提出し、それが終わったら銀行へ口座解約のために戸籍を提出し、それが終わったら自動車の名義変更のために陸運局へ提出するというようにです。
このため、複数の手続が必要となるような場合、それぞれの機関で戸籍一式を提出していたのでは、時間がかかりました。
そこで、戸籍一式を相続手続の都度提出しなくてすむよう、法定相続人の範囲を証明する書面を発行する制度が設けられました。
これが法定相続情報制度です。
この法定相続情報は複数枚発行できるので、法務局、郵便局、銀行、陸運局等へそれぞれ提出し、並行して手続を進めることができます。
確かに、作成のためにある程度の手間は必要になりますが、特に複数の相続手続を行う際は、それ以上の時間と労力の節約になります。
法定相続情報を作成するのがよい場合と不要な場合
作成した方がよい場合
相続登記が必要な場合
相続財産の中に家や土地などの不動産がある場合、法務局に相続による名義変更(相続登記)の申請を行う必要があります。
この際に相続関係説明図という書類を作成するのですが、この相続関係説明図は基本的な構成は法定相続情報と同じです。
違いは、申出人の記載が必要であること、相続人の肩書が異なる、代襲相続の場合は複数作成する必要がある等です。
どうせ相続関係説明図を作り、法務局へも行くのであれば、一緒に法定相続情報も作成してしまうのが便宜です。
複数の相続手続が必要な場合
相続財産に不動産がない場合でも、預貯金口座や自動車のほか、株式などの有価証券、相続税申告など、複数の相続手続が必要な場合、戸籍一式を順次提出するという方法をとると、相続手続の完了が遅れてしまいます。
また、労力の節約という点からも作成するのが望ましいといえます。
極端な例ですが、郵便局、銀行、陸運局、税務署が隣り合わせで建っているのに、戸籍一式を提出する方法ですと、手続の都度、これらの建物へ行き来しなければなりません。法定相続情報があれば、一回行って、それぞれの機関に提出してくれば足ります。
作成が不要な場合
法定相続情報の作成が不要な場合としては、手続の数が少なく、かつ、戸籍の数も少ない場合が挙げられます。
手続が1つであれば、当然、そこへ戸籍一式を提出すれば終わりですので、法定相続情報を作成する必要はありません。
また、手続が複数である場合でも、戸籍の通数が3通くらいまでで済む場合は、法定相続情報はあえて作成しなくてもよいかもしれません。
例えば、父親Aが亡くなり、妻Bと子Cが相続人となる場合、ABCが1通の戸籍に載っていて、他にはAの過去の戸籍1~2通程度という場合は、読み解くのにそれほど時間はかかりません。
もっとも、手続がいくつもある場合は、順に戸籍を提出して手続を行っていかなければならない事には変わらないため、法定相続情報を作成した方がよいかもしれません(手続にどれだけ時間と労力をかけても大丈夫という場合は別ですが)。
交付申出はどこに行うか
法定相続情報は、法務局で作成、交付していますので、法務局に交付の申出をします。
ただ、この法務局はどこでもいいわけではなく、以下の法務局に限られます。
① 被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
② 被相続人の最後の住所地
③ 申出人の住所地
④ 被相続人名義の不動産の所在地
相続財産に不動産が含まれる場合は、不動産所在地管轄の法務局に相続登記の申請を行うので、この際に法定相続情報交付の申出も行うのが便宜です。
④の被相続人名義の不動産の所在地で申出を行うことになります。
それ以外の場合は、相続手続を行う相続人の方の最寄の法務局が直接赴いたり補正をするにも便宜です。
③申出人の住所地の管轄法務局に申出を行うのがよいでしょう。
・管轄法務局を調べる
→法務局公式サイト
申出の方法
申出は平日に直接法務局へ申出に行くほか、郵送によることも可能です。
自身でできない場合は、代理人によることも可能です。
交付までの期間
相続関係の複雑性、法務局の混雑状況にもよりますが、概ね1週間から10日程度を見ておくとよいでしょう。
交付の枚数
1回に交付を受けられる枚数に上限は定められていません。
必要となる手続の数より少し多めに交付を受けておくと、後でしなければならない手続が判明した場合でも、交付申出をし直さなくても済みます。
足りなくなった場合でも、追加で交付も可能です(再交付)。
ただ、再交付の申出は申出人からする必要があります。
手数料
発行手数料は無料です。
具体的な法定相続情報交付の手続はこちら
⇒法定相続情報証明制度の具体的な手続について(法務局公式サイト)
利用できる機関
法務局は勿論、陸運局、税務署などの公的機関は概ね利用できます。ただ、裁判所については取扱に多少のばらつきがあるようです。
民間の機関である金融機関については、法定相続情報を利用するかはそれぞれの機関の判断に委ねられています。
つくば市周辺の金融機関については現在以下のようになっています。
利用できる金融機関
郵便局(ゆうちょ銀行)、筑波銀行、水戸信用金庫、茨城県信用組合(いばしん)。
利用できない金融機関
常陽銀行
できるだけ法定相続情報の作成をお勧めします
上述のように、法定相続情報は、相続人の方の相続手続にかかる時間と労力の節約になります。
また、それに限らず対応する各種機関の負担も軽減します。
戸籍を読み解き相続人の範囲を判断するのは時間と労力と専門的知識が必要となります。それができる人員を配置しておくことは、各種機関にとっても負担となります。
当然人件費もかかり、時間と労力も割かれるため、巡り巡って利用者の手数料等にも関わってきます。
法務局で時間と労力をかけて戸籍を読み解いたのに、また別の機関で全く同じ作業をするというのもリソースの無駄遣いといえます。
少々大げさかもしれませんが、人口減に伴い働き手の数も減少している現在、法定相続情報の利用により省力化できる部分は省力化することで、利用者自身を含めた社会全体にかかる負担の軽減にもなるといえます。
具体的な法定相続情報交付の手続はこちら
⇒法定相続情報証明制度の具体的な手続について(法務局公式サイト)
◇ その他相続手続に関する情報
⇒カテゴリ:相続手続について