遺産分割協議書を作成する際、相続財産や相続人が多いなどの理由で、協議書が1枚に収まらないことがあります。
協議書が複数枚となるケースとしては、以下のような場合が挙げられます。
① 1通の遺産分割協議書が複数ページにわたる場合
② 相続人ごとに1通の遺産分割協議書を作成するケース
③ 相続財産ごとに1通の遺産分割協議書を作成するケース
いずれのケースでも、遺産分割協議書は複数枚にわたって差し支えありません。
項目
① 1通の遺産分割協議書が複数ページにわたる場合
自分で遺産分割協議書を作成する場合、一般的な家庭用プリンタだとA4用紙までしか印刷できないことが多く、1枚に収まらないことがあります。
例えば、父親Aが亡くなり、妻Bと子C・Dが相続人となる。相続財産は土地・建物、複数の銀行口座、自動車である。
A4用紙に、それぞれの財産の情報-土地建物について地番等、銀行口座について銀行名、支店名、口座番号等、自動車について車体番号等-を記載していくと、相続人全員の住所氏名の記載と押印をするスペースがない場合などです。
この場合、A4用紙の1枚目には財産の帰属についての記載を、2枚目には相続人の署名押印を行い、その2枚をホチキスで止めるというように、2枚1組で1通の遺産分割協議書とすることができます。
ただし、1ページ目と2ページ目の境目に相続人全員が署名押印したのと同じ印鑑で契印(割印)する必要があります。
3ページ以上になる場合は、更に2ページ目と3ページ目の境目というように、各ページの境目に相続人全員の契印が必要となります。
② 相続人ごとに1通の遺産分割協議書を作成するケース
上記の例で、A4の用紙に相続財産の帰属を記載した後、3枚をプリントアウトし、その下部に相続人BCDがそれぞれに署名押印することもできます。
すなわち、Bが署名押印した遺産分割協議書、Cが署名押印した遺産分割協議書、Dが署名押印した遺産分割協議書の計3枚を作成し、この3枚1組で1通の遺産分割協議書とすることもできます。
ただし、当然ですが、この3枚は同じ内容のものでなければなりません。
修正してプリントアウトし直したような場合は、別内容の協議書となってしまわないように注意が必要です。
相続人の数が多く、かつ遠方に散らばっているような場合は、この方法が向いているといえます。
③ 相続財産ごとに1通の遺産分割協議書を作成するケース
相続財産が複数ある場合、その一部について協議を行うこともできます。
上記の例では、とりあえず土地建物について妻Bの所有とする旨の協議を行うなどです。
この場合、土地建物についてだけの遺産分割協議書を作成してBCDが署名押印し、その他の財産については後日改めて協議書を作成するという方法も可能です。
出来る限り1枚に収めるのが望ましい
以上のように、遺産分割協議書は必ずしも1枚に収めなければならないものではありません。
ただ、遺産分割協議書が複数ページとなる場合、相続人全員について署名押印のほか、契印も必要となり、押印漏れをしがちです。
この場合、当該相続人に改めて押印してもらわなければならず、特に遠方だと手続に時間がかかりがちですし、場合によっては煩わしさから相続人から相続手続への協力が得られなくなる可能性も否定できません。
また、相続人ごとに1枚ずつの遺産分割協議書を作成する場合は、散逸してしまわないような保管が必要となります。
一般的な家庭の相続の場合、A3の用紙であれば、遺産分割協議書は多くは1通の用紙に収めることが出来ます。
協議書の作成はwordなどのワープロソフトのA3の様式で行い、プリンターがA3に対応していなければ近所のコンビニで印刷だけ行うということもできます。
相続財産や相続人が多いなどの事情がある場合はやむを得ませんが、そのような事情がなければできる限り1枚の協議書に収めるのが、作成の負担や後のトラブルの可能性を小さくでき、望ましいといえます。
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